YOSHIの青春歌謡曲!!

〜青春時代に聴いた宝物の再発見〜

~昭和歌謡史に燦然と輝く名曲!~バス・ストップ/平浩二(1972年9月)

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1972年9月1日に発売された平浩二の7作目のシングル(作詞:千家和也、作曲:葵 まさひこ)で、オリコンヒットチャート最高11位、オリコンセールス22.4万枚、累計売り上げ枚数80万枚を超える平浩二の代表曲。

バスの停留所を舞台とした主人公の切ない女心を平浩二がファルセットのきいた甘いハイトーンの美声で歌い上げている。

この曲がヒットしていた頃は中学1年だったが、バス停をテーマとした曲はそれまであまり無く(後に浅野ゆう子の『セクシー・バスストップ』や榊原郁恵の『バス通学』が発売されたが)新鮮で、下校時にバス停の前を通りながら、良く口ずさんでいたことを記憶している。同じ頃ヒットしていた千葉紘子の『折鶴』も良く歌っていたなぁ…

この『バス・ストップ』の作詞が千家和也であったことを知ったのは、最近の事。千家和也というと、麻丘めぐみキャンディーズ山口百恵等のアイドル歌手の作詞提供のイメージが強く、こんな男性歌手の歌う大人の内容の詞も作っていたとはちょっと意外だった。また、作曲は、以前ブログで紹介したミミ(ミミ萩原)の『おしゃれな土曜日』の葵まさひこ。

作詞:千家和也

作曲:葵 まさひこ

******************

バスを待つ間に 泪を拭くわ

知ってる誰かに 見られたら

あなたが傷つく

何をとり上げても 私が悪い

過ちつぐなう その前に

別れが 来たのね

 

どうぞ 口を開かないで

甘い言葉 聞かせないで

独りで帰る道が とても辛いわ

バスを待つ間に 心(気持ち)を変える

つないだ この手の温もりを

忘れるためにも

(トランペットソロの間奏)

・・・・どうぞ 顔をのぞかないで

後の事を 気にしないで

独りで開ける 部屋の鍵は重たい

バスを待つ間に 心(気持ち)を変える

うるんだ その眼の美しさ

忘れるためにも

*****************

 

♫バスを待つ間に 泪を拭くわ♫

    何と言っても、この歌い出しのファルセットが印象に残る。この曲は、プラターズの『Only You』を基に作られたらしい。言われてみると、♫バスを~♫のメロディーラインは、♫Only You~♫と似ている。

 

♫何をとり上げても 私が悪い   過ちつぐなう その前に    別れが 来たのね♫

   大人になって聞き返すとこれは不倫の内容だと理解。ヒットしていた当時は、何も分からずに歌詞を口ずさんでいたが(笑)…しかし、千家和也の詩はドラマティックで素晴らしい!

 

♫バスを待つ間に 心(気持ち)を変える♫

   バスを待っている時間は、どこかアナログ的。昔はバスの遅れで待ち時間が多少延びても気にせず、のんびり過ごしていた気がする。デジタル化された現代よりも心のゆとりがあったのかも…。

 

♫トランペットソロの間奏が、遠い昭和の時代に過ごした故郷へとタイムスリップさせる。

また、時折響く木琴の音色が切なさを増幅させる。

 

 この曲、元々は南沙織が歌うはずだったと聞いた事がある。そのせいか、歌詞が女言葉。仮に南沙織が歌ったとしてもそこそこヒットしたと思うが、これほど聴く人の心を打つ曲になったかどうか?日本人の感性に響く綺麗な旋律のメロディーと歌詞に、平浩二の甘い歌声と素晴らしい歌唱力に加え独特な歌い方による表現力が絶妙に重なり合って、何年経っても色褪せる事なく心にしみる昭和を代表する名曲が産み出されたのだと思う。

 

数年前に「夢コンサート」で平浩二の『バス・ストップ』を生で聴いた事があるが、昔と変わらぬ歌唱力に加えて、歌詞の一つひとつを心を込めて丁寧に唄っている姿が印象に残っている。これからも昭和歌謡史に燦然と輝くこの名曲を後世に伝えていって欲しいものだ。


平浩二 バスストップ Bus Stop/Koji Taira

~ストーブの芯の交換が曲の原点?~冬が来る前に/紙ふうせん(1977年11月)

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1977年11月1日に発売された「紙ふうせん」の8枚目のシングル。

国民的ソング『翼をください』で有名なフォークグループ「赤い鳥」のメンバーだった後藤悦治郎平山泰代は、「赤い鳥」解散直前に結婚して1974年からフォークデュオ「紙ふうせん」として活動。3年後にリリースされたこの『冬が来る前に』がオリコンチャート最高4位、45万枚の売り上げを記録する大ヒットに。

僕は、この曲を聞く度に何故か、渡辺真知子の『迷い道』の♫ひとつ曲り角ひとつまちがえて  迷い道くねくね~♫(作詞作曲:渡辺真知子)のメロディーがいつもセットになって頭の中をよぎっていた。たまたま、同じ冬の時期にヒットしたからなのだろうと思っていたのだが、ある時『迷い道』も発売日が1977年11月1日であり、『冬が来る前に』と全く同じであることが分かった。何という偶然!!(笑)

 

元々、二人は兵庫県立尼崎北高校3年の時同じクラスだったが、当時から平山泰代は男子生徒のアイドル的存在で、後藤悦治郎は、高嶺の花の彼女に声も掛けられなかったらしい。※1

そんな彼が、生涯のパートナーとして彼女をゲットするまでのエピソードがこの曲に秘められているという。※2

 

作詞:後藤悦治郎

作曲:浦野直

「坂の細い道を 夏の雨にうたれ   言葉さがし続けて 別れた二人

小麦色に焼けた肌は色もあせて   黄昏わたし一人 海を見るの

冬が来る前に   もう一度 あの人とめぐり逢いたい

冬が来る前に   もう一度 あの人とめぐり逢いたい

 

秋の風が吹いて 街はコスモス色   あなたからの便り 風に聞くの

落葉つもる道は 夏の想い出道   今日もわたし一人 バスを待つの

冬が来る前に   もう一度 あの人とめぐり逢いたい

冬が来る前に   もう一度 あの人とめぐり逢いたい」

 

♫坂の細い道を 夏の雨にうたれ   言葉さがし続けて 別れた二人♫

    港町神戸の山手にある動物園。坂の下には港が広がり、振り返ると六甲山を仰ぎ見ることができる。この部分の歌詞は、二人が22歳の頃この動物園でデートした時に、後藤が平山にプロポーズしたものの受け入れてもらえず、二人は気まずい雰囲気のまま動物園から坂道を下った帰り道の体験がベースになったらしい。※2

 

♫冬が来る前に   もう一度 あの人とめぐり逢いたい♫

   晩秋のある日、後藤が「冬が来る前にきれいにしないとアカンなぁ」と呟きながら、円筒形のボディのアラジンの石油ストーブの芯を取り替え、バンドのメンバーだった浦野直が先に仕上げていたサビのメロディーをピアノで弾いていたら「冬が来る前に」というフレーズがはまったという。※1

つまり、♫冬が来る前に、ストーブの芯替えよ♫→♫冬が来る前に   もう一度 あの人と…♫

サビの部分の美しいメロディーと歌詞は、ストーブの芯の交換によるものだったのか(笑)…

 

動物園でのプロポーズから数年後、「赤い鳥」のメンバー5人のうち3人が去っていき(後にハイ・ファイ・セットを結成)、二人だけが取り残された中で、後藤が「これからの人生、フィフティ・フィフティで一緒に生きて行きませんか?」と再度プロポーズ。平山も今度は承諾し、メデタく夫婦デュオの結成とあいなった。※1

 

空振りに終わった最初のプロポーズの後、二人が言葉を探し続けて降りた「坂の細い道」は、決して結婚への「迷い道」などではなく、チョッピリほろ苦い思い出の詰まった「青春の坂道」だったのではないだろうか?

 

※1  BSテレ東  2019年10月15日放送  「大追跡! 懐かしのあのスターは今?」による

※2 TAP the POP  季節(いま)の歌  冬が来る前に~40年間歌い続けてきた二人の絆と、思い出の坂道~佐々木モトアキ氏による


紙ふうせん「冬が来る前に」

~鶏が先か卵が先か~風の駅/野口五郎(1977年10月)

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1977年10月にリリースされた野口五郎の25枚目のシングル。

この曲は、TBSテレビ『ザ・ベストテン』の初回放送時(1978年1月19日)の第10位、つまり、野口五郎は当番組の「ミラーゲート」を通って初めて登場した記念すべき歌手。(ちなみにこの放送時の第1位はピンクレディ「UFO」、第2位はキャンディーズ「わな」)

 

野口五郎のシングルでは、珍しく、『神田川』で有名な喜多条忠(まこと)が作詞を担当(作曲・編曲は筒美京平)。このためか、歌詞の内容は「貧しい生活の中で愛だけが心の支え」と言った、4畳半フォークの世界観が垣間見える。

 

♪僕の帰りを 暗い駅のベンチで  君は待ってた 赤いサンダル♪

    舞台は、狭い下宿ではなく、駅のベンチ。僕の中では、ローカル線の鄙びた無人駅のイメージ。彼女の履いていた「赤いサンダル」が『神田川』の「赤い手拭」を想起させる。

♪紙の袋に こぼれそうなミカン♪

    この曲が流行っている当時は全然違和感無かったのだが、今聴くと昭和の遺物のよう(笑)。

♪夢の続きを 見れるはずもないのに  君が待ってた 駅におりたよ♪

♪遠い風の音 何故か僕の胸で  君が泣いているようだ♪

    会える筈も無いのに彼女との思い出の詰まった駅に出掛けてみるが、聞こえてくる風の音が切なさを一層増幅させるのだろうか…

 

風の音をイメージしたイントロ、野口五郎の熱唱も素晴らしい!

野口五郎の熱唱ぶりは、コロッケ(最近ではカール北川)により良くモノマネされている。

若い年代の人は、テレビでコロッケのモノマネを見た後に、動画等で本物の野口五郎を初めて見た人も多いのでは。

僕は本物の野口五郎の歌い方を昔良くテレビで見ていたので、コロッケらのモノマネを見る度に、「あそこまではやってないだろう…」「あれはやり過ぎだろう!」などと思っていたのだが、改めて野口五郎の動画を見てみると、

イントロ時のキョロキョロと落ち着き無く視点の定まらない表情、右手で持ったマイクを大きく円運動させて口元に持ってくる仕草、ビブラート時の特徴的な顔、硬直した左腕の動き、上半身だけが右に傾いた体勢等々、コロッケそっくり(笑)…

野口五郎のモノマネをしているコロッケを野口五郎がモノマネしているよう(笑)、

鶏が先か、卵が先か、の問題のようにどっちが先か良く分からなくなってきた(笑)。

野口五郎さん、ゴメンなさい…♫笑はって、許して!ゴロウ♫(笑)

 


野口五郎「風の駅」

 

~爽やかな目覚めのメロディーに隠された深くて重い歌詞の意味~きみの朝/岸田智史(1979年3月)

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1979年(昭和54年)3月21日にリリースされ、TBS系のテレビドラマ『愛と喝采と』の挿入歌とされた岸田智史(現・岸田敏志)の8枚目のシングル。

作詞は、このドラマの脚本を手掛けた岡本克己の弟で、『旅の宿』や『襟裳岬』の歌詞で知られる岡本おさみ、作曲は岸田智史本人。

 当時、木曜午後9時の『ザ・ベストテン』の後、午後10時からこのドラマが放送されていた。このドラマに新人歌手の武井吾郎役として出演していたのが岸田。ドラマでは、武井吾郎が『ザ・ベストテン』で注目曲を紹介する人気コーナー『今週のスポットライト』に出演して『きみの朝(ドラマでは「モーニング」のタイトル)』を歌い、ヒットするというシナリオになっていた。岸田智史は、このシナリオ通りに実際に『今週のスポットライト』に出て『きみの朝』を歌い、オリコンチャート1位を獲得して大ヒットになるという、嘘のように出来過ぎたサクセスストーリーを実現する!

 長髪でギターという、いかにもフォーク歌手といった岸田の雰囲気もあってか、当時、『神田川』のような4畳半フォークの世界観でこの曲を聴いていた。

「横たわるきみの顔に 朝の光が射している」の歌い出しから、

同棲している狭い部屋の窓から朝の明るい日差しが差し込んで優しく彼女の寝顔を包み込んでいるが、疲れて熟睡している彼女の寝顔を横で彼が眺めている、そんな微笑ましい日常生活の一コマを取り上げた曲…

作編曲家大村雅朗による、優しく美しいピアノの旋律によるモーニングコールのようなイントロ…

爽やかなルックスの岸田智史自身の作曲による爽やかな朝の目覚めを歌った曲…

ずっと、そんな曲だとばかり思っていた。

 

作詞:岡本おさみ

作曲:岸田智史

編曲:大村雅朗

「横たわるきみの顔に 朝の光が射している

過去の重さを洗おうとして たどりついた深い眠りよ

別れようとする魂と 出会おうとする魂と

あゝ心より躯のほうが 確かめられるというのか

 ※モーニング モーニング きみの朝だよ

モーニング モーニング きみの朝だよ※

 

急ぎ足 ふととめて ふりかえれば夕焼けが

この先いくら生きて行くのか こんな暮し 仮の姿と

生まれようとする魂と 老いぼれてゆく魂と

あゝ人間のはしくれに 生まれてきたというのに

(※くり返し)

 

群衆をのみこんだ 都会の悲しみの渦の中に

コーヒー一杯分のやさしさを そそぎこむ ぼくの唄よ

かわろうとする魂と よどんでしまう魂と

あゝ躯じゅう輝きながら 旅立ってゆけ朝に

(※くり返し×2)」

 

改めて、歌詞を見ていると、ある事が気になった。不思議な事に『きみの朝』という曲なのに、出だしの「深い眠り」の部分以外に、彼女と思われる人物の行動の描写が出てこないのである。

あとは、互いに相反する方向を向いている非日常的な魂の描写と、サビの「モーニング」の繰り返し…

ここで、ハッと気が付いた。彼女の「深い眠り」とは、もう二度と目覚める事のない眠りではないかと!!思わず、全身に戦慄が走った。

『きみの朝』は、朝の病院で、彼女を看取る歌では無かったのか!?

 

こう解釈すると、1,2番では彼女が生死を彷徨っている状態、3番では永遠の眠りにつき都会全体が悲しみに包まれる中、彼女の魂が天界へと飛翔していく状況を描写していると思えなくもない。なんだか、爽やかで美しかったイントロが悲しいレクイエムの様に聞こえ、サビの「モーニング」の連呼がお経の様に聞こえてきた。

 『きみの朝』の歌詞は、人それぞれ色々な解釈があって良いと思う。

このような深い味わいのある『きみの朝』は、正に70年代最後の名曲であり、発売当時の歌番組やドラマから40年以上にわたってずっと聴く事が出来た事を幸せに思う。

 


きみの朝 岸田智史 (1979年)

~幻の岬?となった名デビュー曲~おもいで岬/新沼謙治(1976年2月)

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1976年2月1日にリリースされた新沼謙治のデビュー・シングル。

 

新沼謙治は、岩手県大船渡市出身。左官屋の経歴を持ち、日本テレビ系オーディション番組「スター誕生!」に5度目の挑戦でようやく合格して歌手デビューを果たした苦労人。芸能コースのある堀越学園に通学していた他のアイドル歌手とは一味も二味も違う。普段は訛り丸出しの東北弁でぼそぼそと喋るが、歌になると一変して、安定感のある堂々とした歌いっぷりになる…このギャップが印象的だった。

 

デビュー後は、2ndシングル「嫁に来ないか」がヒットし、第18回日本レコード大賞新人賞を受賞し、NHK紅白歌合戦にも初出場。このため、「嫁に来ないか」が新沼謙治のデビュー曲だと思っている人も多いようだ。

 

「おもいで岬」の作詞は「スター誕生!」の審査員だった阿久悠。作曲は、由紀さおり「手紙」、夏木マリ「絹の靴下」、金井克子「他人の関係」、布施明「積木の部屋」、岩崎宏美「熱帯魚」などのインパクトあるヒット曲を提供した川口真。

 

歌詞は4番まであり、北の岬の「春夏秋冬」の情景が綴られた阿久悠の歌詞が叙情的で美しい旋律の川口真の曲と良くマッチしている。

 

作詞:阿久悠

作曲:川口真

「春はたき火の 燃えのこり消えた流氷 とぶ鴎

酒を片手の 親父らが 顔をゆるめる 口ずさむ

北の岬は 今もなお 忘れられない 忘れられない おもいで岬

 

夏は真赤な ハマナスが 夜に人待つ 虫も鳴く

人目しのんで 若い衆が 肌を寄せ合う 月の下

北の岬は 今もなお 忘れられない 忘れられない おもいで岬

 

秋ははやばや 色づいて 風の音する すすり泣く

酒が恋しい 人恋し 手紙ばかりを 書く夜ふけ

北の岬は 今もなお 忘れられない 忘れられない おもいで岬

 

冬はたずねる 人もなく白い灯台 ただ一つ

耐えてしのんで 船のりが 行方たずねる 目をはらす

北の岬は 今もなお 忘れられない 忘れられない おもいで岬」

 

わずか4分程度の時間で、北の岬の一年の季節の移ろいが味わえる(ただし、動画では、時間の関係で、春と冬のみの歌詞となっている)。

 

歌詞には「北の岬」とあるだけで、具体的な地名は出てこないが、「流氷」とあるので、北海道のオホーツク海沿岸の岬か?

 

「おもいで岬」は、オリコンチャート最高38位。新人歌手のデビュー曲としてはまずまずの好スタートを切ったと言えるのではないだろうか?それで、飛躍のきっかけとなった次曲の「嫁に来ないか」ではオリコンでベストテンの上位にでも食い込んだのではないかと思って調べてみると、これが意外や31位とそれほど変わっていない!

 

当時の売れ行きはそれほど変わらないのに、「嫁に来ないか」が新沼謙治の代表曲またはデビュー曲(?)として現在でもテレビで盛んに歌われている一方で、「おもいで岬」の方はほとんど聞いたことがない。いつのまにか誰も知らない幻の岬となってしまったのか??(笑)

 


新沼謙治「おもいで岬」

〜三億円事件犯人の時効成立直前の心境??~時の過ぎゆくままに/沢田研二(1975年8月)

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フランスでヒットした「パリにひとり」に続いて75年8月21日に発売されたジュリーこと沢田研二の14枚目シングル(作詞:阿久悠、作曲:大野克夫)。5週連続1位、年間チャート4位と自身最大のヒット曲となった。

 

この曲は、戦後の未解決事件として最も有名な三億円事件(68年12月10日発生)をモチーフとしてジュリーが犯人役の主人公を演じたドラマ「悪魔のようなあいつ」(TBS系で75年6月6日から同年9月26日まで放送)の主題歌だったらしい。(このドラマが放送されていた当時はTBSが放映されない地域に住んでいたので、残念ながらこのドラマは見ていない。)

 

ドラマは、実際の事件の時効(1975年12月10日)まで半年に迫った時点から始まり、各回の終わりに「三億円事件 時効まで あと○○日」というテロップが表示され、実際の事件とリンクした展開で進んでいったようだ。だが、曲の大ヒットとは正反対にドラマの視聴率は低迷し、本来は時効の直前まで続く予定だったのが、時効が成立する三ヶ月程前の「時効まであと75日」のテロップで最終回となった模様。

 

作詞と作曲の担当については、当時「時間ですよ」シリーズなどの名作を手がけていたTBSテレビの演出家久世光彦がまず阿久悠に沢田主演のドラマの主題歌の作詞を依頼。次に、阿久の詞に対して、大野克夫井上堯之井上大輔加瀬邦彦荒木一郎、都倉俊一の6人にコンペで曲を競わせ、久世の判断で大野の曲が選ばれることになったようだ。

 

6人が提供した曲の中では、大野の曲が一番ドラマのイメージや阿久悠の詞に合っていたのだろうか?コンペに参加したこれらの超豪華な作曲家のメンバーから選ばれた曲なら、ヒットして当然か。。

 

作詞:阿久悠

作曲:大野克夫

「あなたはすっかり疲れてしまい  生きてることさえいやだと泣いた

こわれたピアノで 想い出の唄  片手で弾いては 溜息ついた

 

時の過ぎゆくままにこの身をまかせ  男と女が ただよいながら

堕ちて行くのも 幸せだよと  二人冷たい 身体合わせる

 

身体の傷なら 直せるけれど  心の痛手は いやせはしない

小指にくいこむ 指輪を見つめ  あなたは昔を 想って泣いた

 

※時の過ぎゆくままにこの身をまかせ  男と女が ただよいながら

もしも二人が愛するならば  窓の景色も変わってゆくだろう※

(※くりかえし)」

 

退廃的な雰囲気の歌詞の内容と共に、動画での沢田研二は、男の色気を感じさせつつも、どこか儚げで、気だるく妖しげな表情。

 

♫あなたはすっかり疲れてしまい  生きてることさえいやだと泣いた♫

♫時の過ぎゆくままにこの身をまかせ  男と女が ただよいながら

堕ちて行くのも 幸せだよと  二人冷たい 身体合わせる♫

 

歌詞が何とも意味深に思えてくる。

三億円事件の本当の犯人は、堕落した人生を罪悪感に苛まれながら過ごしつつも、この歌詞のように時の過ぎ行くままにこの身をまかせて、実際の時効完成の日を迎えたのだろうか……

 


沢田研二「時の過ぎゆくままに」

〜天地真理のサマーソングとの意外な関連性~太陽の日曜日/荒川務(1974年6月)

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74年6月10日発売のデビュー曲「太陽の日曜日」で、荒川務は、日本レコード大賞新人賞を受賞(なお、この年、浅野ゆう子城みちるテレサ・テン、西川峰子らも同時に新人賞を受賞している)。

 

74年と言えば、400組もの新人歌手・アーティストがデビューした空前の戦国時代。太田裕美伊藤咲子あいざき進也アルフィー、イルカなどの現在も活躍中の実力派もこの年にデビューしている。

 

「太陽の日曜日」の曲は当時から良く口ずさんでいたが、荒川務が歌番組に出演していた記憶は全くなく、むしろオールスター大運動会の走り高跳びで活躍したことの記憶だけがしっかりと残っている(笑)。

 

前回、天地真理の「恋と海とTシャツと」の作詞が安井かずみであることを紹介したが、その記事を書いている途中に、荒川務の「太陽の日曜日」の作詞も確か安井かずみだったよな、と思い出した。

 

調べてみると、「太陽の日曜日」の発売日は74年6月10日で、「恋と海とTシャツと」の発売日(74年6月1日)と、ほぼ同時期。

 

作詞:安井 かずみ

作曲:都倉 俊一

「あとからおいでよ 君も

皆んなで 集まる まぶしい太陽だよ 

今日は日曜日

一・二の三・四で 海に

皆んなで 駆け出すまぶしい砂浜だよ 

今日は休みだよ!

海は友だちさ 風は恋人 今の僕には

波を追いかけて ぬれたシャツなら

裸になろう

いつか たった一度 見た きれいな人

感じた恋のはじまり僕の胸に忘れられなくて

ヘヘイ 君のこと!

 

あとからおいでよ 君も

友達 来てるよまぶしい太陽だよ 

今日は日曜日

一・二の三・四で 誰が

一番早いか まぶしい砂浜だよ

今日は 休みだよ!

 真赤なギターを 弾いてうたえば 僕の心に

おぼえたての歌 なぜか切ない

初恋の海

いつかたった 一度 見た きれいな人

感じた恋のはじまり僕の胸に忘れられなくて

ヘヘイ 君のこと!」

 

歌詞には、太陽、海、砂浜、風、波、シャツなどの夏鉄板ワードが多数出てくる。一方、「恋と海とTシャツと」の歌詞も、太陽が「お陽さま」となっているが、海、砂浜、潮風、波、Tシャツが登場し、確かに良く似ている。同じ作詞家なので、似ていても全く問題はないが、安井かずみは、同じ時期に同じ情景をイメージにして2曲を同時並行的に作ったのではないか。

 

ただし、同じ夏定番の情景でも、「恋と海とTシャツと」は、恋にときめく乙女心をモチーフとしているのに対して、「太陽の日曜日」は、甘酸っぱく切ない初恋のティストをさらりと織り込んでいる。男性アイドル歌手のデビュー曲のテーマとして相応しく仕上げており、流石は安井かずみである。

 

歌詞の最後の「ヘヘイ 君のこと!」

特に意味は無いが、何故か印象に残るフレーズ。

「恋と海とTシャツと」の「あまりに恋が シャララ 素敵だから」のシャララの歌詞もまた然り。

 

それと、曲のタイトルだが、安井かずみ作詞の曲には、「日曜日」以外にも、「おしゃれな土曜日」(ミミ萩原:73年10月発売)や「危ない土曜日」(キャンディーズ:74年4月発売)など74年前後に発売された「土曜日」をタイトルとしたものもある。

 

こうして、全く違う曲同士に共通点を見つけると、何か宝物を発見したような気分になる(笑)


荒川務「太陽の日曜日」