「春の予感-I've been mellow-」は、1978年1月21日に発売された南沙織通算25枚目のシングル(発売元はCBS・ソニー)。
本楽曲は、シンガーソングライターの尾崎亜美が他のアーティストに楽曲提供した初めての作品にあたる。なお、尾崎は同年11月5日に杏里に「オリビアを聴きながら」の楽曲も提供している。
「春の予感-I've been mellow-」は、資生堂・春のキャンペーン・ソングに採用され、東京音楽祭ゴールデンカナリー賞作詞賞を受賞。オリコン最高25位、売上枚数7.6万枚のスマッシュヒットとなった※。
※1968-1997オリコンチャートブックによる
この曲を初めて聴いた時、曲名と歌詞にある"mellow"が気になり、オリビア・ニュートン・ジョンの「そよ風の誘惑」が頭の中をよぎったことを覚えている。
「そよ風の誘惑」(1975年1月発売)には、"Have you never been mellow(穏やかなひと時を過ごせている?)"という問いかけのような歌詞があり、「春の予感」の「I've been mellow(私はここのところリラックスしているよ)」の歌詞がそれに対するアンサーのように思えたからである。
作詞・作曲・編曲:尾崎亜美
「ひにくなジョーク追いかけるのは もうおしまいにしましょう
頬杖つく二人のドラマ ワインに揺られて
春の予感 そんな気分 時を止めてしまえば
春に誘われたわけじゃない
だけど気づいて I've been mellow
グラス越しにあなたの視線 感じて心波立つ
今なら素直にあなたの胸に 飛びこめそうなの
春の予感 そんな気分 いつもと違うでしょう
春に誘われたわけじゃない
だけど気づいて I've been mellow」
尾崎亜美が杏里に提供した「オリビアを聴きながら」の「オリビア」とは、「そよ風の誘惑」を歌っていたオリビア・ニュートン・ジョンのことであり、当時、尾崎亜美は曲作りにあたってオリビア・ニュートン・ジョンの影響を受けていたものと思われる。
同じオリビアの影響を感じさせる両曲であっても、「春の予感-I've been mellow-」は恋愛のプロローグ感を漂わせているのに対して、「オリビアを聴きながら」は恋愛のエピローグを感じさせ、両者が真逆な物語となっているのが興味深い。
久し振りにこの曲を聴いてみて、そよ風に靡いているような南沙織の美しい髪が印象に残るとともに、歌い方が普段の南沙織と違うことが気になった。2006年当時の本人の解説によると、レコーディングでは「沙織節」にならないよう歌い方を厳しく指導されたらしい。
穏やかな春の陽気に包まれ、そよ風とともに彼の胸に飛び込もうとする可愛い主人公の女性を演じようとしていたのかもしれない。