「遥かなる恋人へ」(作詞:竜真知子、作曲・編曲:馬飼野康二)は、1978年11月25日に発売された西城秀樹の27枚目のシングル。
もう40年以上も前になるのだが、世紀の名バラードと評判高い「ブルースカイ・ブルー」(同年8月25日発売)と国民的ヒット曲「YANG MAN(Y.M.C.A)」(79年2月21日発売)の間にリリースされたためか、いささか地味な印象のあるバラード曲。
オリコンチャートを見ても、週間最高8位、売上数19.3万枚※と、特別ヒットした曲ではない。
※1968-1997オリコンチャートブックによる
しかし、「YOSHIの青春歌謡曲‼︎!」(youtube)の動画再生回数を見ると、西城秀樹の中では「ブルースカイ・ブルー」(7万回)、「君よ抱かれて熱くなれ」(6万回)に続いて、3番目(5万回)にランクしている人気曲なのである。
遠距離恋愛をテーマにしたこの曲。都会に旅立った彼は、遠い故郷に残した彼女が自分にとってかけがえのない存在であることに気付き、彼女の元に戻ってプロポーズする(と思われる)ハッピーエンドなストーリ。
「①南の風が雪をとかす頃 あなたの街へと帰ってゆきたい
遠い故郷に残した恋人 あなたは待っててくれるだろうか
こごえた胸に今よみがえるイン・マイ・ハート まぶしいあなたの愛忘れた日はなかった
春の窓辺の陽だまりのような 柔らかな微笑みをもう一度
長くきびしい冬をのり越えて あなたをこの手で倖わせにしたい
②都会に向けて旅立ったあの日 あなたは目を伏せ涙かくした
つらい気持ちをわかっていながら 優しい言葉も言えずに別れた
瞳とじれば今よみがえるイン・マイ・ハート あなたの笑顔だけが支えと気づいたのさ
めざめる朝のぬくもりのような さわやかなまなざしをもう一度
長くきびしい冬をのり越えて あなたをこの手で倖わせにしたい
あなたをこの手で倖わせにしたい」
秀樹が40年以上も前に残してくれたこのバラード曲。改めて聴くと、遥かなる時空間を超えた秀樹からのメッセージのように聞こえる。秀樹は、暖かな陽だまりのように優しく寄り添い、相手に対する思いやりの大切さを誠実な人柄から溢れ出すように教えてくれていた。
ヒデキの歌唱力、また表現力の高さを体感できる正に「隠れた名曲」であり、自分の中では、この「遥かなる恋人へ」が、三木たかし作曲の「ラストシーン」と共に、秀樹のバラードの双璧をなす曲だと思っている。
以下、余談だが、この曲を聴くと、当時、同じように地元に残した彼女の事を思い出す。
高校3年の時のクラスメートだったが、彼女は極めて成績優秀、クラスでもトッレベルで、地元の国立大医学部に現役合格。自分はなんとか都会の大学の工学部に入って、数年間、遠距離恋愛の状態が続いた。普段は文通をし、自分が里帰りした時は彼女の車でデートしていた。
しかし、徐々に文通の回数も減り、いつしか自然消滅してしまった。
同じ遠距離恋愛をテーマとした太田裕美の大ヒット曲「木綿のハンカチーフ」の主人公のように、都会の絵の具に染まってしまい、地元に残した彼女を悲しませていたかもしれない…。
当時、この曲をもっと聴いていれば、彼女に対してもう少し優しく接してあげれた気もする。
清楚な風貌に似合わず、格闘技が好きだった彼女。今まで地元で何度も同窓会があったが彼女とは一度も会っていない。ずいぶんと前に風の噂で、中国地方で医師をしていると聞いたが、現在も幸せに暮らしているのだろうか?