いきなりスマッシュヒットしたデビュー曲「二重唱(デュエット)」(75年4月発売)に続く2ndシングル「ロマンス」(75年7月発売)で早くもオリコンチャート1位を獲得!
2曲目での1位獲得は、松田聖子(1位はサードシングルの「風は秋色」から)よりも早いペース。
ただ、今回紹介するのは、この大ヒット曲「ロマンス」ではなく、そのB面の「私たち」(作詞作曲は「ロマンス」と同じ阿久悠・筒美京平)
元々、「ロマンス」と「私たち」は、どちらをA面に持ってくるか決まっておらず、作曲の筒美京平が「私たち」を推挙し、作詞の阿久悠が「ロマンス」にこだわったため、最後にはスタッフ間で採決をとり、1票差で「ロマンス」をA面にすることになったという逸話が伝えられている。だが、今だに岩崎のファンの中には、「私たち」の方が「ロマンス」よりもA面に相応しいという「私たち」派も多いらしく、コンサートでは毎回この曲でかなり盛り上がるらしい。僕もどちらかと言うと「私たち」派!
「私たち」は、岩崎の高音での伸びやかな歌声が冴え渡る、メロディ重視の曲のように思える。歌詞の内容も、
♫両手をひろげて 足りないくらい あなたをいっぱい 愛しています
私たち多分 結ばれるでしょう きっときっと 結ばれるでしょう♫
当時16才だった岩崎と同世代の女の子の心境をストレートに表現した歌詞で、岩崎のハイトーンと相まって聴いていて心地良い。
これに対して、「ロマンス」は、メロディよりも歌詞重視の歌ではなかろうか。
♫あなたお願いよ 席を立たないで 息がかかるほどそばにいてほしい♫
♫生まれて始めて 愛されて 私はきれいに なって行く 甘い甘い ロマンスなの しあわせな私♫
確かに、「私たち」よりも男性受けしそうな、インパクトのある歌詞。ただ、「息がかかるほどそばにいてほしい」なんて、16才の子が普通に言える内容とは思えないが(笑)。でも、当時聴いていて全く違和感を感じなかった。普通はあり得ない内容のインパクトのある歌詞を歌唱力のある岩崎に爽やかにさり気なく歌わせる。この辺が阿久悠の計算された凄さなのかも知れない。
結局、「私たち」と「ロマンス」とA面争いは、「私たち」派の筒美京平と「ロマンス」派の阿久悠とが、お互いのプライドを賭けて、岩崎宏美という歌唱力の優れた歌手を通じた行ったガチンコ勝負だったのでは?
結果は逸話にもなっているように僅か1票差で「ロマンス」に軍配が上がったが…仮に「私たち」がA面だったとしても「ロマンス」ほど大ヒットしたかどうか分からない。しかし、「ロマンス」に劣らない名曲であることは間違いないと思う。
なお、「私たち」は岩崎と同じ「スター誕生」出身の石野真子がカバーしている。石野も歌唱力のある歌手なので、似たような出来の歌なのかなと思って聴いてみると、サビの部分の高音の伸びが全く違うんだな、これが(笑)!
「私たち」は岩崎宏美にしか歌えない。岩崎の突き抜けるような高音の音声が生かされるようにメロディを提供した筒美京平はやはり素晴らしい!