78年5月25日発売の石川ひとみのデビューシングル。
フジテレビ系で放送されていたオーディション番組「君こそスターだ!」でチャンピオンとなり、18歳の時に歌手デビュー!!アイドル歌手のデビュー年齢としてはやや遅めだが、妖精のような清楚な美しさと群を抜く歌唱力で当時から並みのアイドルとは別格感を漂わせていたように思うし、親衛隊(←死語?(笑))からも絶大な人気があった。
作詞は後に松田聖子や河合奈保子のデビューシングルを手掛けた三浦徳子(よしこ)、作曲はザ・ピーナッツや園まりでヒットを飛ばしていたベテランの宮川泰という申し分ない強力コンビだったが…
オリコンチャート最高66位、売り上げ1万5千枚とヒットには至らず、70年代前半から中盤にデビューした桜田淳子、山口百恵、岩崎宏美や、80年代前半にデビューした松田聖子、河合奈保子、中森明菜らと比べて、インパクトの乏しい結果に…
アイドル不毛の70年代後半にデビューという時代背景があったのかも知れない。しかし、他にも問題があったのでは?
「右向け右」は、振られた女性の悲痛な心の叫びを軽快なアップテンポのサウンドに載せたシリアスな失恋ソング。歌っていた当時は、ノリの良いサウンドとアイドルらしい可愛い振付けばかりに心を奪われ、詞に若干の違和感を感じつつも、あまり意識していなかった。しかし、改めて歌詞を見ると内容はかなり重い。
♫右向け右 Ah 心が痛い 左に行く彼 追っちゃいけない
そんなに信じられなきゃ さっさと消えればいいでしょう♫
途中から別々の道を歩いていく情景は、先日紹介した「グッド・バイ・マイ・ラブ」と一見似ている(但し、彼が左に行く点で「グッド…」と逆ではあるが(笑))。
だが、「グッド…」の主人公の女性は振り返ったら彼の後ろ姿を見えなくなるまでずっと見つめてるような感じがするが、「右向け右」の女性はとっとと視界から消えろと…(笑)
一方で、
♫Ah あきらめるには少し Ah 愛しすぎたみたいです
何故よ 何故なの 本気だった気持 ふりむいて♫
彼の事を諦めきれず、未練タラタラの怨念女(笑)。。。
しかし、振られた女性の揺れ動く感情の叫びのようなものが正統派の大物清純アイドルのデビュー曲のテーマとして相応しいものなのか??
普通、アイドル歌手のデビュー曲のテーマは、「出逢い」、恋の「芽生え」、「初恋」、大人や性への「目覚め」、「少女」、「天使」や実年齢(17歳等)等を題材としたものだろう。南沙織、麻丘めぐみ、桜田淳子、山口百恵、岩崎宏美、松田聖子、中森明菜らもデビュー曲のテーマはこれらに該当している。
百歩譲って、失恋がテーマだったとしても、「グッド・バイ・マイ・ラブ」のように、しっとりと聴かせる曲であれば、石川ひとみの歌唱力が活かされたかもしれないし、この曲の主人公の女性は石川ひとみのイメージとも重なる。
だか、「右向け右」の主人公の女性は、石川ひとみのイメージとは大きくかけ離れていると言わざるを得ない。デビュー当時、この曲を聴いて感じた若干の違和感はこの辺にあったのかも。
でも、こうして「右向け右」と「グッド・バイ・マイ・ラブ」を対比してみると、主人公の女性の進む方向やイメージが全く逆なのが面白い!(笑)