75年8月に発売された荒井由実作詞作曲のアグネス・チャン11枚目のシングル。二十歳になったアグネスのためにユーミンが大人のバラードをプレゼントしたもの。
アグネスと言えば、72年11月に「ひなげしの花」でデビュー以降「草原の輝き」、「小さな恋の物語」、「星に願いを」、「ポケットいっぱいの秘密」、「愛の迷い子」など立て続けにヒット曲を連発!少女っぽい内容の歌詞をたどたどしい独特の歌い方で唄う、白いハイソックスがトレードマークのアイドルだった。ところが、この曲は、これまでのシングル曲とは全く異なる切ない失恋ソング。ユーミンならではの哀愁感漂うメロディーと独特の世界観に思わず引き込まれてしまう。
作詞作曲:荒井由実
私の瞳に 映ったあなたが
涙にゆがんで こぼれ落ちてしまう
私の心に住んでた あなたが
誰かと腕組み 遠くへ行ってしまう
歩道橋の上でよりそって
並木道 見下ろして
きみとどこまでも歩きたいと
云ったのは うそなの
失くしたものなど何もないけれど
白いくつ下 もう似合わないでしょう
歩道橋から並木道を見下ろす情景は、自分の中では、原宿駅前にあった歩道橋と情景が重なったね。ここからは表参道の並木道が良く見下ろせた(ただし、この歩道橋は数年前に撤去されて、今はもう無い…残念)。
「失くしたものなど何もないけれど 白いくつ下もう似合わないでしょう」
彼という一番大切な人が去ってしまって、「失くしたものなど何もない」はずはない。
だが、少女から大人へと成長していく過程でこの失恋はマイナスではなく、むしろプラスとなる必要な経験と捉えれば、失くしたものなど何もないのだろう。精神的にも成長して白い靴下の似合う純粋な少女から大人の女性へと脱皮していく。アグネスの二十歳の誕生日にこんな素敵な曲をプレゼントできるユーミンって、やっぱり凄いよね!