フランスでヒットした「パリにひとり」に続いて75年8月21日に発売されたジュリーこと沢田研二の14枚目シングル(作詞:阿久悠、作曲:大野克夫)。5週連続1位、年間チャート4位と自身最大のヒット曲となった。
この曲は、戦後の未解決事件として最も有名な三億円事件(68年12月10日発生)をモチーフとしてジュリーが犯人役の主人公を演じたドラマ「悪魔のようなあいつ」(TBS系で75年6月6日から同年9月26日まで放送)の主題歌だったらしい。(このドラマが放送されていた当時はTBSが放映されない地域に住んでいたので、残念ながらこのドラマは見ていない。)
ドラマは、実際の事件の時効(1975年12月10日)まで半年に迫った時点から始まり、各回の終わりに「三億円事件 時効まで あと○○日」というテロップが表示され、実際の事件とリンクした展開で進んでいったようだ。だが、曲の大ヒットとは正反対にドラマの視聴率は低迷し、本来は時効の直前まで続く予定だったのが、時効が成立する三ヶ月程前の「時効まであと75日」のテロップで最終回となった模様。
作詞と作曲の担当については、当時「時間ですよ」シリーズなどの名作を手がけていたTBSテレビの演出家久世光彦がまず阿久悠に沢田主演のドラマの主題歌の作詞を依頼。次に、阿久の詞に対して、大野克夫、井上堯之、井上大輔、加瀬邦彦、荒木一郎、都倉俊一の6人にコンペで曲を競わせ、久世の判断で大野の曲が選ばれることになったようだ。
6人が提供した曲の中では、大野の曲が一番ドラマのイメージや阿久悠の詞に合っていたのだろうか?コンペに参加したこれらの超豪華な作曲家のメンバーから選ばれた曲なら、ヒットして当然か。。
作詞:阿久悠
作曲:大野克夫
「あなたはすっかり疲れてしまい 生きてることさえいやだと泣いた
こわれたピアノで 想い出の唄 片手で弾いては 溜息ついた
時の過ぎゆくままにこの身をまかせ 男と女が ただよいながら
堕ちて行くのも 幸せだよと 二人冷たい 身体合わせる
身体の傷なら 直せるけれど 心の痛手は いやせはしない
小指にくいこむ 指輪を見つめ あなたは昔を 想って泣いた
※時の過ぎゆくままにこの身をまかせ 男と女が ただよいながら
もしも二人が愛するならば 窓の景色も変わってゆくだろう※
(※くりかえし)」
退廃的な雰囲気の歌詞の内容と共に、動画での沢田研二は、男の色気を感じさせつつも、どこか儚げで、気だるく妖しげな表情。
♫あなたはすっかり疲れてしまい 生きてることさえいやだと泣いた♫
♫時の過ぎゆくままにこの身をまかせ 男と女が ただよいながら
堕ちて行くのも 幸せだよと 二人冷たい 身体合わせる♫
歌詞が何とも意味深に思えてくる。
三億円事件の本当の犯人は、堕落した人生を罪悪感に苛まれながら過ごしつつも、この歌詞のように時の過ぎ行くままにこの身をまかせて、実際の時効完成の日を迎えたのだろうか……