1972年9月1日に発売された平浩二の7作目のシングル(作詞:千家和也、作曲:葵 まさひこ)で、オリコンヒットチャート最高11位、オリコンセールス22.4万枚、累計売り上げ枚数80万枚を超える平浩二の代表曲。
バスの停留所を舞台とした主人公の切ない女心を平浩二がファルセットのきいた甘いハイトーンの美声で歌い上げている。
この曲がヒットしていた頃は中学1年だったが、バス停をテーマとした曲はそれまであまり無く(後に浅野ゆう子の『セクシー・バスストップ』や榊原郁恵の『バス通学』が発売されたが)新鮮で、下校時にバス停の前を通りながら、良く口ずさんでいたことを記憶している。同じ頃ヒットしていた千葉紘子の『折鶴』も良く歌っていたなぁ…
この『バス・ストップ』の作詞が千家和也であったことを知ったのは、最近の事。千家和也というと、麻丘めぐみ、キャンディーズ、山口百恵等のアイドル歌手の作詞提供のイメージが強く、こんな男性歌手の歌う大人の内容の詞も作っていたとはちょっと意外だった。また、作曲は、以前ブログで紹介したミミ(ミミ萩原)の『おしゃれな土曜日』の葵まさひこ。
作詞:千家和也
作曲:葵 まさひこ
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バスを待つ間に 泪を拭くわ
知ってる誰かに 見られたら
あなたが傷つく
何をとり上げても 私が悪い
過ちつぐなう その前に
別れが 来たのね
どうぞ 口を開かないで
甘い言葉 聞かせないで
独りで帰る道が とても辛いわ
バスを待つ間に 心(気持ち)を変える
つないだ この手の温もりを
忘れるためにも
(トランペットソロの間奏)
・・・・どうぞ 顔をのぞかないで
後の事を 気にしないで
独りで開ける 部屋の鍵は重たい
バスを待つ間に 心(気持ち)を変える
うるんだ その眼の美しさ
忘れるためにも
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♫バスを待つ間に 泪を拭くわ♫
何と言っても、この歌い出しのファルセットが印象に残る。この曲は、プラターズの『Only You』を基に作られたらしい。言われてみると、♫バスを~♫のメロディーラインは、♫Only You~♫と似ている。
♫何をとり上げても 私が悪い 過ちつぐなう その前に 別れが 来たのね♫
大人になって聞き返すとこれは不倫の内容だと理解。ヒットしていた当時は、何も分からずに歌詞を口ずさんでいたが(笑)…しかし、千家和也の詩はドラマティックで素晴らしい!
♫バスを待つ間に 心(気持ち)を変える♫
バスを待っている時間は、どこかアナログ的。昔はバスの遅れで待ち時間が多少延びても気にせず、のんびり過ごしていた気がする。デジタル化された現代よりも心のゆとりがあったのかも…。
♫トランペットソロの間奏が、遠い昭和の時代に過ごした故郷へとタイムスリップさせる。
また、時折響く木琴の音色が切なさを増幅させる。
この曲、元々は南沙織が歌うはずだったと聞いた事がある。そのせいか、歌詞が女言葉。仮に南沙織が歌ったとしてもそこそこヒットしたと思うが、これほど聴く人の心を打つ曲になったかどうか?日本人の感性に響く綺麗な旋律のメロディーと歌詞に、平浩二の甘い歌声と素晴らしい歌唱力に加え独特な歌い方による表現力が絶妙に重なり合って、何年経っても色褪せる事なく心にしみる昭和を代表する名曲が産み出されたのだと思う。
数年前に「夢コンサート」で平浩二の『バス・ストップ』を生で聴いた事があるが、昔と変わらぬ歌唱力に加えて、歌詞の一つひとつを心を込めて丁寧に唄っている姿が印象に残っている。これからも昭和歌謡史に燦然と輝くこの名曲を後世に伝えていって欲しいものだ。