73年5月にリリースされた山口百恵のデビュー・シングル。
作詞は、麻丘めぐみやキャンディーズなどの70年代アイドルに多く提供した千家和也、作曲はピンク・レディーや「ジョニィへの伝言」「あずさ2号」など数多くのヒット曲を手掛けた都倉俊一。
山口百恵というと、同じ「スター誕生!」出身の森昌子、桜田淳子と共に「花の中三トリオ」と呼ばれていたが、デビュー当時は、歌唱力抜群の森昌子、アイドルの資質に際立っていた桜田淳子と比べて地味でオーラもなく、人気・実力共に二人に大きく差を付けられてけられていたことを覚えている。
この曲は、デビュー当時14才だった彼女の「めざめ」をテーマとした曲。改めて聴いてみると、初々しく可愛い百恵の歌声が、汚れのない純粋な歌詞内容とビックリする程ハマっている!明るい正統派アイドルポップス風のサウンドは聴いていて心地良い。山口百恵の数多くのヒット曲の中でも5本の指に入る名曲だと僕は思う。
オリコンチャート最高37位と決して売れなかった訳ではないが、森昌子のデビュー曲「せんせい」が3位、桜田淳子の「天使も夢みる」が12位だったことに比べて、スタートダッシュに出遅れてしまった。地味な百恵の印象が先行してしまい、曲が埋もれてしまったと思っている。だが、次のセカンドシングル「青い果実」から同じめざめでも「性」の目覚めをストレートな言葉で歌う「青い性路線」に変更。歌詞のインパクトは絶大で、百恵は絶大な人気を獲得し、先行する森昌子、桜田淳子に一気に追いつくことに…
デビューシングル「としごろ」の歌詞
♬ふたりの間に 美しい何かが生まれて来るみたい
私が私でなくなるの
手のひらに 涙をためてめざめてくる としごろよ♬
セカンドシングル「青い果実」の歌詞
♬恋した時に 躰の隅で別の私が 眼を覚ますの
大きな胸に 抱きとめられてきれいな泪 こぼすのよ♬
こうして2曲の歌詞を比べてみると、
「目覚め」で新しい自分が生まれてくるというテーマは同じでも、「青い果実」は具体的でストレートな歌詞だが、「としごろ」はやや抽象的な歌詞。
デビュー曲の「としごろ」は、当時の百恵の印象や歌詞にインパクトに乏しく、後に紅白歌合戦でトリを務める程、大化けする片鱗も垣間見れない。山口百恵伝説が意外なほど地味に始まった事は、今振り返ってみると、何とも興味深いね。