「哀愁のシンフォニー」は、1976年11月26日に発売されたキャンディーズの12枚目のシングル(作詞:なかにし礼、作曲:三木たかし、編曲:馬飼野康二)。
デビュー以来続いてきたアイドル路線の曲調とは全く異なり、切なく格調高いバラードで、初めてテレビで見た時、かなりの衝撃を受けた。
オリコン最高12位、売上枚数22.8万枚*と、キャンディーズのシングルの中では目立ったヒット曲とは言えないが、隠れた名曲的存在で、自分の中では、キャンディーズで一番好きな曲。
*1968-1997オリコンチャートブックによる
当時は高校生だったが、キャンディーズ3人の中ではランのファンだったこともあって、ランのソロのパートを歌っていた時の表情だけが妙に印象に残っている。
この動画は、シングル発売前に出演した夜のヒットスタジオ(同年11月15日放送)からのもの。
改めて見ると、バラード曲の割には、イントロや歌の合間に大きな動きを伴う振りが入っている。
特に、ランのソロパートが始まる前に、スーとミキが一旦ランの前に出てランを隠した後、離れる動きがある。ランによるステージの幕が上がるようにも見えて、なかなか凝った振り付けだが、その後の他の動画では省略されており見られず、今では貴重な振り付けである。
「あなたの目が私を見て 涙うかべてたその顔がつらい
白い霧が二人の影を やさしくつつんでいたわ
私の胸の奥のみずうみにあなたは
涙の石を投げた 愛の深さにおびえるの ああ
※こっちを向いて涙をふいて
あなたのこと愛せるかしら
なんとなく恐い※
あなたの目がぬれているのを 見たの初めてよ美しいものね
白い霧の遥かなかなた 朝日がもえてるみたい
あなたの風のような気まぐれが悪いの
遊びと恋の区別 まだまだ私つかないの ああ
こっちを向いてやさしく抱いて
あなたのこと愛せるかしら
なんとなく恐い
(※くり返し)」
改めて歌詞を見てみると、彼の涙を浮かべた愛の告白を受け入れるかどうか迷っている主人公の女性の心境が綴られているようだが、「哀愁のシンフォニー」の曲名との関連性が不明である。また、何故、彼が涙を浮かべているのかも分からない。
実は、この曲の原型となった初期バージョン(同じクレジット(作詞作曲編曲者)で、歌詞と曲の一部だけ異なる)の「霧のわかれ」という曲があり、2008年9月3日発売の『キャンディーズ・タイムカプセル』に、ボーナストラックとして収録されている。
こちらの曲だと、「霧のわかれ」という曲名と歌詞の具体的なストーリーがリンクしており、また、彼の涙の訳も理解できる。しかし、歌詞の内容がストレートで、別れのイメージが強くなり過ぎたため、歌詞の一部を変更し影響力を弱めて曲を重視した「哀愁のシンフォニー」となったのではないかと思う。
「哀愁のシンフォニー」では、哀愁を帯びたメロディー展開や、「ダバダー」のスキャット、ソロ・ユニゾン・3声和音とバラエティーに富んだ歌唱、バックの様々な音色による演奏、イントロや歌の合間の振り付けなど、色々な要素が混じり合ってシンフォニー(交響曲)と言えるようなパワーを発揮し、キャンディ-ズの楽曲の中でも特に歌謡曲らしい仕上がりの名曲になっていると思う。
だが、3人によるこの交響曲は、もう新たには見られない。もう一度、あの頃の青春時代に戻りたいと思うのは僕だけだろうか?